「オレ、クビになるんか」
吉本興業のお笑いコンビ「NON STYLE」の石田明(42)は、びびっていた。
呼び出されたのだ。岡本昭彦社長に。しかもサシで。
何かしでかしたはずや。頭を巡らせる。
闇営業の時のアレか。ヤイヤイ言うてもうたもんなあ。
意を決して会いに行くと、社長は言った。
「力を、貸してほしい」
!?
これは、多分(テレビ番組の)「ドッキリ」や。
こんなことが自分の人生に起きるとは――。
「やりたいことないんか」
実際は真面目な話だった。
社長の話はこう。
まずは、芸人養成所のNSCを変えたい。カリキュラムを作ってほしい、と。
そして、本題へ。
「石田、なんかやりたいこと、ないんか」
大阪を盛り上げる巨大プロジェクトは、この瞬間から始まった。
「大阪城夢祭(ゆめまつり)」(大阪市主催)。名前に負けず劣らず、スケールも大きいイベントが10月15日から9日間、大阪城公園をジャックする。
目玉は、「太陽の広場」周辺で開く「大阪楽市楽座」。漫才にコメディー、芝居とあらゆるエンタメのショーを繰り広げる。
プロデュースを任されたのが石田だ。
◆大阪城夢祭 10月15~23日、大阪城公園の天守閣前本丸広場、太陽の広場などで開催。「NON STYLE」石田明がプロデュースする大阪楽市楽座は、太陽の広場周辺で午前11時~午後6時。コメディー劇場「楽市楽座亭」(有料)は、9日間で50ステージ以上ある。石田が脚本・演出を手がける舞台「結」では、芸人にとって武器であるはずのしゃべりを封印。動きや表情で楽しませる非言語の芸を披露する。
大阪出身の芸人で、2008年のM―1グランプリ優勝から14年。今も目が回るほど忙しい。
劇場での漫才、テレビ出演、NSCの講師、と息つく間もなく動いている。
なぜこんなことに?
理由は、「超絶イエスマン」だから。
頼まれたら断れない。
もともと控えめな性格で、人前に出るタイプではなかった石田さん。後に相方となる井上裕介さんの誘いを断れなかったことから、人生が動き出します。壮絶だった貧しい生い立ちと、巻き込まれっぱなしの不運な半生に訪れる変化。やがて漫才日本一となり、1千万円の賞金、さらには1億円を手にするまで、チャンスをどうつかんでいくのか。記事後半で。
増える仕事、つながる縁。い…
Source : 社会 – 朝日新聞デジタル